「姫、先に向かっててください。この後に追いかけますゆえ」
エッジは抜刀し、前の敵とジュエルの間に立ちふさがる。
「でも」
ジュエルが言おうとしたとき、エッジは両の手でその刀を上段に構えた。
握りなおした刀のその身は薄く、ランタンの弱い光にもきらりと輝いた。
青い鎧と銀の縁飾り、そして刀。
エルフの細身の男は、洞窟内で淡く輝く青い炎のようであった。
その背を見ているジュエルはごくりとつばをのんだ。
戦いは避けられない。
「でも…あなたを置いては」
一歩下がりながらも、不安を口にした。
戦いが始まるときに、そんなことを言うなど、言語道断である。
しかし、彼女は言わずにはいられない性分だった。
むしろ、すべての不安を口にして、すべての悪い可能性を封じたいほうであった。
そんなジュエルの癖をエッジは了解していた。
「拙者が戻らなかったときが、ありましたか?」
エッジが小さな声でジュエルに聞いた。
「…!」
「姫、疾(と)く」
ジュエルははっとした。
そして、覚悟を決めてジュエルはうなづいた。そしてすぐテレポートの詠唱をはじめた。
エッジを除いた仲間を対象とし、安全な地へと送るために。
エッジの青い鎧と刃がきらりと輝き、前へ出るのと同時に詠唱を完成させた。
目の前に輝く光が現れる。
光は収束し、限界を超えるように弾け、虹色になって方々に散った。
その瞬間、後方の6名はその空間から姿を消した。
残るは、敵と、エッジのみ。
-----
「ほほう、私の弟弟子であるミスラルエッジよ、己を犠牲として味方を逃したか」
「うるせーチンが」
「チ…! 兄弟子に向かって何を…」
「チンだよ。オマエなんてチンだよ。確かに兄弟子だよ? ホントならあんま悪く言いたかねーけど、オマエ師匠倒したじゃん。それってどうよ。その必要あったか? しかもオマエいっつもお母さんと一緒の登場ばっかじゃん。どうせ家で『チンして食べてね♪』とかおばさんに言われてんだろ。いまさらしゃしゃってくんじゃねーよ」
「ミスラルエッジ…おぬしは本当に…こうなんというか…エルフ語が雑というかなんと言うか」
「俺のことはオマエに関係ねーだろ」
「いやまあそうではあるが」
「というか何なの? 一人で出てきて勝てると思ったの? 馬鹿なの?」
「いや一人ではなくドラウの軍勢率いてるんで」
「部隊着くの遅いとか、意味ないと思わない? 同時に来ないってことは、その間自分で何とかできるとか思ってた? 俺の前で? ホント馬鹿なの?」
「ふざけるな! こちとらおぬしより2レベルも上!本気を出せばオマエのBAB(※1)とか呪文ぐらい…」
「ハア? ふざけるなってこっちの台詞ですけど?」
「!」
「オマエ、俺に勝てると思ってんの? たかが俺のアッパーバージョンだろ? なら、俺の運用で 俺 が 負 け る わ け ね ー じ ゃ ん 」
-----
ジャマーシップが港に係留されている。すでにアローガムは先ほどからずっと時計を気にしている。出航の時間が来ているのだ。
「エッジ殿…」
ジュエルは魔方陣をずっと見つめている。エッジがそこから戻ってくるのを待っているのだ。
ハーフエルフのネアは、甲板の上から声をかけた。
「ジュエル、そろそろ船にあがろう? もう王宮まで向かわなきゃならない時間よ。これ以上ここでは待てないわ」
ネアは少し言葉を選びながらも告げる。もう猶予はない。
エーテルの海を渡る風に、ジュエルはケープの前をあわせる。
「でも…エッジ殿が…」
「彼ならすぐ追いつくわよ。どんな方法でもあるんだから」
「でも…」
ジュエルが、不安を口にしようとしたその瞬間、先ほどまで見つめていた魔方陣に強い光が収束した。その後、虹色にはじけたかと思うと、空中から青に銀の縁取りの鎧をつけたエルフが倒れ掛かってきた。
「キャッ!…エッジ殿!」
「すまぬ、ちと、待たせたでござるか…」
エルフの女性の肩に顔を乗せるようにして出てきた青銀の鎧の男は、疲れた顔を上げ、笑った。
「エッジ殿、怪我をしております!ゴートさんに癒しの奇跡を…」
「姫、拙者は大丈夫でござる。それより…早く任務を遂行すべきにござる…くっ」
安心した顔をしたのはジュエルだけではなかった。
ネアも声をかけた。
「怪我しちゃったね、エッジ!…でも詳しい話はスペルジャマーシップの中で聞くわ」
「そうすることにしよう…」
「歩けないほどじゃないわね、エッジ? アローガムさん! エッジが帰ってきたわよ!船を準備を!」
甲板のネアに、エッジは笑顔をつくり、手を挙げて答えた。
エッジがシップへと歩くその後ろを、ジュエルが心配そうについていく。
「無事、戻ってきてくださって、よかった…」
「拙者、姫に約束したでござるゆえ」
エッジはやや足を引きながら、小さく応えた。
「ええ、あなたは約束を破ったことはありませぬから…でもよかった…」
少し立ち止まり、エッジは後ろを向く。
ぶつかりそうになったジュエルは、驚いて顔をあげる。
「大丈夫でござるよ…姫、泣いているでござるか?」
「そ、そんなことありません! よかったって言っただけです!」
エッジは怒ったような声のジュエルを少し不思議そうな顔をして見ていたが、「ヘンな姉さん」とエルフ後で小さく言うと、また前を向いて歩き出した。
船は予定通りのメンバーを乗せ、山のふもとにある王宮へと飛んでいったのであった。
-----
・ギャップ萌えにも限度があるわあって言う話。
・丸瀬布の雨宮号を見ながら。
・列車がスペルジャマーシップだったらなー雨宮ってウォーターディープと似てない?と思いながら。
・ジュエルは昔からこんな面倒な設定でしたー。
ミスラルエッジ
グレイエルフ。故ライトニングエッジに師事した。
兄弟子がイーグルエッジで、ここでは「敵」。
ジュエルの一番上の姉であるスターダストと婚約中。
でも一番の仲良しはネア姐さん。
ムーンジュエル
グレイエルフ。ウィザード。
ツリーオブライフを護る村長の三女。ゆえに姫と呼ばれる。
ライトニングエッジのことが好き。
エッジは抜刀し、前の敵とジュエルの間に立ちふさがる。
「でも」
ジュエルが言おうとしたとき、エッジは両の手でその刀を上段に構えた。
握りなおした刀のその身は薄く、ランタンの弱い光にもきらりと輝いた。
青い鎧と銀の縁飾り、そして刀。
エルフの細身の男は、洞窟内で淡く輝く青い炎のようであった。
その背を見ているジュエルはごくりとつばをのんだ。
戦いは避けられない。
「でも…あなたを置いては」
一歩下がりながらも、不安を口にした。
戦いが始まるときに、そんなことを言うなど、言語道断である。
しかし、彼女は言わずにはいられない性分だった。
むしろ、すべての不安を口にして、すべての悪い可能性を封じたいほうであった。
そんなジュエルの癖をエッジは了解していた。
「拙者が戻らなかったときが、ありましたか?」
エッジが小さな声でジュエルに聞いた。
「…!」
「姫、疾(と)く」
ジュエルははっとした。
そして、覚悟を決めてジュエルはうなづいた。そしてすぐテレポートの詠唱をはじめた。
エッジを除いた仲間を対象とし、安全な地へと送るために。
エッジの青い鎧と刃がきらりと輝き、前へ出るのと同時に詠唱を完成させた。
目の前に輝く光が現れる。
光は収束し、限界を超えるように弾け、虹色になって方々に散った。
その瞬間、後方の6名はその空間から姿を消した。
残るは、敵と、エッジのみ。
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「ほほう、私の弟弟子であるミスラルエッジよ、己を犠牲として味方を逃したか」
「うるせーチンが」
「チ…! 兄弟子に向かって何を…」
「チンだよ。オマエなんてチンだよ。確かに兄弟子だよ? ホントならあんま悪く言いたかねーけど、オマエ師匠倒したじゃん。それってどうよ。その必要あったか? しかもオマエいっつもお母さんと一緒の登場ばっかじゃん。どうせ家で『チンして食べてね♪』とかおばさんに言われてんだろ。いまさらしゃしゃってくんじゃねーよ」
「ミスラルエッジ…おぬしは本当に…こうなんというか…エルフ語が雑というかなんと言うか」
「俺のことはオマエに関係ねーだろ」
「いやまあそうではあるが」
「というか何なの? 一人で出てきて勝てると思ったの? 馬鹿なの?」
「いや一人ではなくドラウの軍勢率いてるんで」
「部隊着くの遅いとか、意味ないと思わない? 同時に来ないってことは、その間自分で何とかできるとか思ってた? 俺の前で? ホント馬鹿なの?」
「ふざけるな! こちとらおぬしより2レベルも上!本気を出せばオマエのBAB(※1)とか呪文ぐらい…」
「ハア? ふざけるなってこっちの台詞ですけど?」
「!」
「オマエ、俺に勝てると思ってんの? たかが俺のアッパーバージョンだろ? なら、俺の運用で 俺 が 負 け る わ け ね ー じ ゃ ん 」
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ジャマーシップが港に係留されている。すでにアローガムは先ほどからずっと時計を気にしている。出航の時間が来ているのだ。
「エッジ殿…」
ジュエルは魔方陣をずっと見つめている。エッジがそこから戻ってくるのを待っているのだ。
ハーフエルフのネアは、甲板の上から声をかけた。
「ジュエル、そろそろ船にあがろう? もう王宮まで向かわなきゃならない時間よ。これ以上ここでは待てないわ」
ネアは少し言葉を選びながらも告げる。もう猶予はない。
エーテルの海を渡る風に、ジュエルはケープの前をあわせる。
「でも…エッジ殿が…」
「彼ならすぐ追いつくわよ。どんな方法でもあるんだから」
「でも…」
ジュエルが、不安を口にしようとしたその瞬間、先ほどまで見つめていた魔方陣に強い光が収束した。その後、虹色にはじけたかと思うと、空中から青に銀の縁取りの鎧をつけたエルフが倒れ掛かってきた。
「キャッ!…エッジ殿!」
「すまぬ、ちと、待たせたでござるか…」
エルフの女性の肩に顔を乗せるようにして出てきた青銀の鎧の男は、疲れた顔を上げ、笑った。
「エッジ殿、怪我をしております!ゴートさんに癒しの奇跡を…」
「姫、拙者は大丈夫でござる。それより…早く任務を遂行すべきにござる…くっ」
安心した顔をしたのはジュエルだけではなかった。
ネアも声をかけた。
「怪我しちゃったね、エッジ!…でも詳しい話はスペルジャマーシップの中で聞くわ」
「そうすることにしよう…」
「歩けないほどじゃないわね、エッジ? アローガムさん! エッジが帰ってきたわよ!船を準備を!」
甲板のネアに、エッジは笑顔をつくり、手を挙げて答えた。
エッジがシップへと歩くその後ろを、ジュエルが心配そうについていく。
「無事、戻ってきてくださって、よかった…」
「拙者、姫に約束したでござるゆえ」
エッジはやや足を引きながら、小さく応えた。
「ええ、あなたは約束を破ったことはありませぬから…でもよかった…」
少し立ち止まり、エッジは後ろを向く。
ぶつかりそうになったジュエルは、驚いて顔をあげる。
「大丈夫でござるよ…姫、泣いているでござるか?」
「そ、そんなことありません! よかったって言っただけです!」
エッジは怒ったような声のジュエルを少し不思議そうな顔をして見ていたが、「ヘンな姉さん」とエルフ後で小さく言うと、また前を向いて歩き出した。
船は予定通りのメンバーを乗せ、山のふもとにある王宮へと飛んでいったのであった。
-----
・ギャップ萌えにも限度があるわあって言う話。
・丸瀬布の雨宮号を見ながら。
・列車がスペルジャマーシップだったらなー雨宮ってウォーターディープと似てない?と思いながら。
・ジュエルは昔からこんな面倒な設定でしたー。
ミスラルエッジ
グレイエルフ。故ライトニングエッジに師事した。
兄弟子がイーグルエッジで、ここでは「敵」。
ジュエルの一番上の姉であるスターダストと婚約中。
でも一番の仲良しはネア姐さん。
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