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TRPGとメタルフィギュア好き。 多肉の写真もあげています。 現在オンセはD&Dしています。
ウォーハンマーRPGのPC、マーセルが、どんな風にしてのなかさんPC・ドルウェンのホモホモしい魔の手から逃れているか?
それって、意外と「健全な思考」じゃないかと思うのですよね。
そんな、流星群降る夜の一考について。

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よく晴れた日の夜だった。昼間は蒸し暑い一日だった。
住み慣れた町を出て、アルトドルフへと移動してきた途中の道で、俺たちはとある旅籠に泊まった。
正直、山も濃く、野宿も覚悟の日であったので、黄昏ごろに明かりが道の先に見えたときは正直ほっとした。
この季節、野宿は蚊がうるさくてかなわない。暑苦しいのに、のみがついた毛布を頭までかぶるのは少々やっかいだからだ。それに較べれば、旅の宿の馬糞臭い藁の上であっても、まだましだというものだ。

この旅籠では、思ったより清潔な部屋があてがわれた。都会と同じだけの料金を取るのかとはじめ愉快ではなかったが、このきれいな空気、敷き布であれば納得だ。
しかも、旅籠は少々変わったつくりになっていた。大きな風呂がついていた。部屋よりも大きいほどの風呂場に、敷布よりも大きな大きな湯だまりがあり、そこから湯気が上がっているのだ。また、風呂部屋から外に出るドアがあり、そこから池かと思うような大きな湯だまりもあった。その湯だまりに、皆で一斉に入るというものだ。

仲間はみな大きな溜め湯に入る習慣がないのと、人に裸を見せるのがいやなようで、今晩は湯浴みをしないとのことだった。
ジェフリーにいたっては、よく賭けで裸一貫で帰ってくるのに、なぜ風呂で裸になるのが恥ずかしいのか、俺には皆目見当がつかぬ。
最近トマソは鎧を脱ぐところすら俺たちに見せないようになった。あいつは何か重要なことを俺たちに隠しているような気がするが、まあ今のところはわからぬので放っておくしかない。
俺は昔、月代(さかやき)の仕方を教えてくれた部族が、このような大きな湯に入る習慣があったので、この風呂の入り方を心得ていた。
なので、「よければ俺が入り方を教えられるが…」と、遠慮がちに薦めてはみたが、誰も首を縦に振らなかったのだ。ハインツなどはまるで俺からの手ほどきは受けぬと言ったように鼻をフンと鳴らした。皆、大きな風呂の開放感というものを知らずに生きているのがもったいないと思っているのに。

ただ、俺が兄上と呼んで慕っているエルフの男、ドルウェンだけは是と言った。


「そうだな…今はまだ皆が起きているから、その間は皆と行動しよう。ちょうど寝静まったころ、カッケルファックス流星群が見えるころにね、二人で風呂で酒を飲もう」
「や、兄上、そんな耳元で言わなくても聞こえます。して、流星群とは何ですか?」

最近の兄上は、何かと耳元で話をしてくるのが気にはなっているが、特に困ったことではないので、毛嫌いするのも申し訳なく、なんとなく近すぎるときだけこのように言っている。

「流れ星がたくさん降ることだよ。年に一度、そんな夜があるんだよ」
「それが、今日ですか」
「そう」

これはまた、エルフの兄上は洒落たことを言うなと思った。
ふうんと軽く返事をして、ではまたあとで、と兄上に告げた。

最近、同じエルフのヤンバルと仲良くしている兄上が、なんとなく面白くないような気がしていた。だが、今日は自分の方を見てくれていて、少しうれしいようなくすぐったいような心持ちがした。

「まあ、先に風呂を使わせていただきます」
「長風呂はのぼせると言いますからね、気をつけるのですよ」
「大丈夫ですよ!」

時々、兄上は、まるで子供か女を心配するように俺を扱う。
まあ、エルフに較べれば、俺は子供のような年なのかもしれない。
もう29歳にもなって、とっくに大人のはずなのだが。

仲間の居る部屋に鎧と金目のものを置き、暗くなった廊下を一人で渡り、大きな風呂へ向かった。風呂場の前の脱衣所に服を置き(ダガーも一本だけ革靴の隠しに入れてある)、腹からタオルをたらし、前をかくして風呂に入る。
女はどうだか知らないが、男はこれで用が足りるのだから、何も裸であることを恥ずかしがることはないのにと思うのだが、彼らはその説明を聞くことすらできぬ辛抱の足らぬものたちばかりだった。
近くにある、ジョッキのようなもので湯をすくい、体に数杯かけ、身を清めてから湯につかる。

ああ。
湯の中に体が解けゆくような感覚。
この開放感。
この開放感がよいのだ。
なんという快楽であろう。
仲間が知らぬことが、もったいなくてしょうがない。
できることなら、教えたいし、共有したいと願うのに。

湯屋の向こうの空を見上げた。まだ西の空は赤く染まっていた。真上の空はようやく夜の女神の色である紺に染まりつつあった。木々と湯気で星がまばらに見えたが、流れ星は目を凝らしても見えなかった。

「そういえば、兄上は…」


流星群を見よう、といった。
皆が寝てから、と言ったから、夜中だろうか。

「兄上は、そんな時間に俺を酔わせてどうするんだ。こちらは生娘でもあるまいし」

と、ひとりごちて笑った。

生娘ならぬ「生男」も価値があるならよいのに、と、思いながら、少し笑った。

しばらく湯につかり、幸せな時間を堪能していたが、少したつともう飽きてきた。
頭に濡れたタオルを乗せ、湯のへりに積んである石に両手をかけながら、考えていた。
さて、兄上が入ってくるまで待とうか。
風呂での酒は多分うまいだろう。
だが、それほど酒が強くない俺は、すぐ酔いが回る。
そうなると、久しぶりの兄上との話す時間が短くなるだろう。
ならば、いっそ部屋で兄上と長く語らおう。そうだ、それがいい。

ざばと湯からあがった俺は、タオルで体の水分を手早く吹きとり、いつもの服を着て戻ることにした。
兄上と、もっと話そう。
そして、もっといろいろなことを知ろう。
そういう時間を兄上も欲してくれているのだろう。
女の話しかしないハインツや、賭けの話しかしないジェフリーなんかより高尚な話をしよう。
そうだ、そんな一時的な快楽ではない、もっと高みの話だ。
俺は、暗くなる前に急いで服を身につけ、部屋へと戻っていったのだった。

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マーセル、セーーーーーーフ!




網走、呼人の温泉につかりながらこんなことを考えてました。

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