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TRPGとメタルフィギュア好き。 現在オンセはD&Dしています。 タイトルの由来はダイエットしなくちゃならないところだから。
※ちょっと不適切だったり過激だったりする表現が出てきます。


15歳以上、分別が出来たころのお年の方に見てもらいたいと思います。












「マーセル、マーセル、…どうだ、そろそろ見張りを頼んでもいいか?」

何の夢を見ていたかは詳細は覚えてないが、暖かな部屋の夢を見ていた俺は、トントンと肩をたたかれ、現実に引き戻された。
肩の上のほうに目を向けると、ハインツが眠そうな顔で薄く笑いながら言った。

「雲の向こうのお月さんが真上に着たようだから、そろそろ俺も眠らせてくれ」

「…あ…うん、もうそんな時間か」

「焚き火にあたっていたのに、背中のほうが寒くてね。寒い季節の野営は本当なんだか疲れるよ」

「そうだな…交代しよう。少し短いが、ゆっくり寝てくれ」

「そうさせてくれ」

俺は座りなおし、軽く伸びをした。そのあと毛布を持ち、そっと立ち上がる。周りの人を起こさないようにして、自分がいた場所をハインツにくれてやる。

野営の二日目。
今日は大十字流星群の日。けれども、空は曇りで、かろうじて月の光は見えるが、星はまったく見えない。

大十字が南天に上る季節になると…俺はひとつの命の消えた日のことを思い出す。

上着のかくしにある「L」とだけ書いた手紙に触れながら。



もう、18年は昔のことになる。
その頃俺はxxxと呼ばれていた。「マーセル」というのは、後になって俺が自分につけた名だ。
その時の俺には妹がいた。
今でこそ「兄が二人」と答えているが、その昔は「兄が二人と妹が一人」だった。
兄も4つ上だったが、それでも一緒になってよく泥だらけになって遊んだものだった。しかし、8つ離れた妹は、俺にとって、きょうだいというより「宝物」であった。

俺は彼女を愛していた。

きょうだいとしてなのか、恋人としてなのかは、当時の俺の心が幼すぎ、渾然としていて今でもわからない。
ただただ、彼女を、愛していた。彼女を胸に抱くときの甘い匂い、柔らかさ、暖かさ…そのすべては俺にとっての幸福そのものだった。

彼女を貫いて汚してしまえば、自分のものになると思った。
誰のものにもならない、自分だけのものになると思っていた。
俺が彼女を養えばいい。俺が彼女の生涯の伴侶になればいい。俺ならば彼女を幸せにできるのだと思っていた。
そして、彼女ならその俺の気持ちを理解してくれるのではないかと思っていた。
子供の彼女も、そして、成長して大人になったであろう彼女も。

◆ ◆ ◆

時々森の中のほうに意識を集中させる。今日は何の音も聞こえない。
動物が時々出てはくるだろうが…今日は、まだいない。
もう少し暖かい季節ならば虫もうるさいが、この寒さでは悩まさせることもない。
木を新しくくべ、棒でつつきながら火をつける。枯れ木にはすぐ火がつくが、生木はなかなか難しい。表面が乾き、その皮がぱちぱちはぜる音が聞こえるころには、ハインツの寝息はすでに規則正しいものとなっていた。兄上は先ほど息が聞こえなくなったので起きたのだろうが、今はスースーと聞こえるようになった。また寝入っているのだろう。
トマソは…あの男のいびきが聞こえなくなって久しい。それが懐かしくもあり、悲しくもある。


俺は安全を確認すると、また昔の記憶をなぞっていた。

彼女が5歳になったころ、俺は彼女を抱き上げることに少し戸惑いを感じはじめていた。彼女の着替えに立ち会うことも、湯浴みに付き合うことも。男三人兄弟の中で、俺が一番下だったので、家族の面倒を見るのは当たり前の仕事ではあったが、それを上手にできなくなっていた。

彼女に触れたいと願っていた。
しかし、その願いはいささか邪であるようにも感じていた。
気持ちの向くままに触れてしまえば、それは彼女を壊してしまうことになるようなしていた。

両親が生きているならば、母親が世話をしてやったのだろう。
兄二人は、俺よりも体格がよく、力仕事を上手にこなしていた。父親代わりだった。俺はどちらかというと器用なことのほうが得意だった。つまり、俺が母親の代わりをしなくてはならないのに。
たかだか5歳の少女を女として見る俺は、どうかしている。
そう思いながら、彼女のだっこをせがむ声にも応えられない自分が厭わた。

「じゃあおれが抱いてやるか」
一番上の兄が言った。
「…いや」
「じゃあ中(なか)にいが抱っこしてやろう」
笑いながら言い合う兄に対し、妹はかたくなに首を振る。
「ちいにいがいいの」
「兄が抱っこするのにいやな妹があるか」
「いやだよう、おおにいもなかにいも、だっこはいたいもん」
「ひげか?痛くなんかしないさ、ほら、高い高いもしてやるからな」
「いやだ!」

妹の態度は態度は一貫して変わらなかった。おびえているようにも見えた。
妹は逃げるように俺の膝に乗っかってくる。俺はなんだか男として何かが足りないような気がして、恥ずかしくなった。
「…xxxは本当母親代わりだからな、仕方ねえか」
「だな」

そうして、兄同士は酒を飲んで笑っていた。
確かに、兄二人は乱暴だ。幼い彼女をうまくあやすことが上手とは思えない。それに、立派な男が、子供とはいえ彼女を抱くのを見るのも俺はいやであった。
自分の後ろめたさからか…兄らも彼女のことを家族以上に愛しているような気がしたからだ。
また、そんな気持ちでしか相手を見ることができない自分がさらにいやになった。


◆ ◆ ◆

その年は秋が来るのが早かった。
町で行われた収穫祭の食料を買い込むころには、町中で熱の出る咳が流行していた。
そしてそれは瞬く間に潰瘍のできる病へと変わっていった。
俺の家では、兄二人は健康ですごしていたが、幼い妹と、まだ大人に成りきれていなかった俺は、その熱の出る潰瘍に蝕まれていたのだった。

大十字流星群の日。
一週間ほど前から、彼女は高熱が出るようになって臥せっていた。しかし、その日は体調がよく、朝から元気に歌など唄って起きていた。
俺はあまり良くなってはおらず、日が高く上るまで寝ていたが、兄たちに食事を出すための買出しのため、外へ出かけようとしていた。


「xxx、今日は少しお金を多くやるから、ゆっくりしてこい。宿屋で酒でも飲んできたらどうだ」
「…そんな金があるなら、うまい飯でも食べたほうがいいよ」
「まあ、いいから、遊んでこいよ。そのほうが気晴らしにもなって、その潰瘍も早く直るだろうさ」

兄たちは休みの日に、時々家事をする俺のためにこずかいをくれ、休みもくれた。
いつもならうれしくて、町でパイを買ったり、芸人の踊りを眺めて過ごし、夕方、薄暗くなるころ帰っていた。
だが、今日は…自分の体調も思わしくなく、町での買い物を楽しむ元気も持てず、早く岐路に着いた。今日は彼女も少し元気だから、飴をひとつだけ買って。

空が茜色になるころ。家に入ろうとした。
何か良くない気配がして、扉をあけるのをためらった。
中から妹の小さな悲鳴と、酒に酔った兄たちの声が聞こえた、ような気がした。

「ヒッ…おおにい、やめて」
「おおにい早く終わらせてくれよ、そろそろあいつが帰ってくるころだろ、早く俺に貸してくれよ」
「やめて、いたい、あたまおさえないで、いたいいたい」
「xxxはまだ帰ってこないさ、今頃あいつも酒でも飲んでるはず。夕方までまだたっぷりある」
「やめてよ、おおにい」
「おいおい、お前は兄ちゃんのだっこを受け入れられないのか?困った妹だなあ。そら、高い高いをしてやろう」

兄たちは。

俺と同じように、彼女を愛してはいなかった。

彼女の身に起こっていたことが恐ろしかった。

兄たちが怖かった。

見てはいけないものを見たのが悲しかった。

俺は、助けに入ることはできなかった。

彼女の泣き声が大きくなった。
俺は、家のそばでうずくまり、彼女の声を聞かないように耳をふさぎ、耐えることしかできなかった。


◆ ◆ ◆

カサコソという音に振り向いたが、動物でも人でもなかった。
風に揺れる木の葉が月のぼんやりとした光を遮っただけだった。
俺のことをマーセルと呼ぶ仲間は、今全員夢の中だ。
火が小さくなってきたので、月の光が目に入るようになってきたのだろう。彼らを暖めようとたきぎを足した。多少のぱちぱちというはぜる音では起きることはないだろう。
ジェフリーなどはニヤニヤしながら寝ている。
まあいい。せめて、夢の中だけでも楽しくいられるように。

どのぐらいたったのかは、わからない。
家の中は静かになった。妹のか細く泣く声だけが静かに聞こえる。
しばらくすると、兄二人のいびきが聞こえはじめた。
病に弱る彼女の声は長くは続かず、次第に消えて行った。
俺は、まるで泥棒に入るかのように、静かに家に入った。そもそも、ここが自分の家かどうかもわからなくなっていた。
倒れるようにしている彼女は、まるで初めからそこに寝ているかのように、着衣がきれいに直されていたのがとても悲しかった。
彼女が怯えていたのは…何度もこのような目に遭っていたのか。
なぜ俺は彼女の態度から気づいてやることができなかったんだろう。
目から涙があふれ、彼女の熱のある頬も、潰瘍もよく見えなくなった。
彼女を抱き上げた。彼女は寝てしまったのか、目を覚ますことはなかった。
俺は自分の持ち物であるナイフを持ち、彼女を肩に担ぐようにして、家を出た。

病のせいか、彼女は5歳にしては軽いような気がした。
しかし、最近だっこもしていなかったから、そもそも元気だった時の重さすら俺はわからなかった。
そうした一つ一つについて考えるたび、涙があふれた。
少しして、町はずれの大きな木まで来た。子供の時に、兄らとよく遊んだ場所ではあった。だが、夜にここを訪れるものはないだろう。
秋になり、大樹は紅葉した葉をたくさん地面に落していた。俺はその枯葉をかき集めてうろの中に敷き、彼女を寝かせた。

わかっていた。
あれほど熱のあった彼女は、徐々に、冷たくなっていた。
「もう少し、待っててくれ。お前の仇を取ってくる。少しだけ、時間をくれ、Lxxxx」


その後のことは、あまりよく覚えていない。
家に戻り、兄に馬乗りになって、首にナイフを突き立てただけだ。
それを2回繰り返しただけだ。
力では兄たちに一度も勝てなかった俺が、確実に仕留めるのはこのタイミングだけだ、と、思っていたことだけは鮮明に覚えている。後は、その俺自身の考えたプランに従っただけだ。

木のうろに戻った時には、彼女の体温はほぼ失われていた。
それでも、俺は彼女を抱いて、夜明けまで俺の体温を与え続けた。
何度もうろのすき間から空を見た。いくつもの流星が涙のように流れ落ちてきた。
どの流れ星も、大地に落ちる前に消えてしまう。
大人になれなかった子供のように、それは、はかなく。
すっかり冷たくなった彼女の地面におろす前に、俺はポケットの中にあった飴を、俺の口に入れた。そして、彼女の口にそっとうつした。

◆ ◆ ◆

長い追懐のあと、東の空が白み始めてきたことに気がついた。
結局、今年は大十字流星群はひとつも見ることができなかった。
ロマンチックなことのひとつも言いそうなヤンバルに流星の話をしたときにも、「何ですかそれはおいしいんですかね?」の返事が帰ってきたときには愕然とした。
エルフだからといって必ずしもみんながロマンチックなことを言うわけではなかったらしい。


いつから彼女を兄弟に数えなくなったのだろう。
彼女がいなくなって、10年経ち、生きていたなら成人しただろうころからだ。
成人していたなら、もう結婚して、よき伴侶を見つけていただろう。
俺の手から離れ、誰かのものになっている年頃だ。
そう考えとき、俺は兄弟のリストからはずした。
正しくは、「宝物」のリストから彼女をはずしたのだろう。

宝物ではなくなったのだろうか?
いや、そうではない。
彼女が俺の心の中で15歳のまま時を止めたのだろう、と、今の俺は思っている。

一緒に年を経るのを彼女はやめた。
そして、俺も、彼女をきょうだいとして見るのをやめたのだ。

彼女は、俺の心の中の花嫁だから。

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